第30章 断章 ご飯?お風呂?それとも……?
も、もっと深いキスを、私から!?
慌てて確認すると伏黒は頷いてくすりと笑う。
少し暗めにした照明に照らされたその顔は色香を纏っていて、ドキリとなずなの心臓を打った。
いつも私がしてもらうばかりだから恵くんの希望には応えたい。
で、でももっと深いキスって……
こっちからだとどうやればいいの?
恵くんに気持ち良くなってもらえるのかな?
どうしても踏ん切りがつかずに困り顔で手をこまねいていると、モジモジさせていたその手を伏黒の大きな手が包み込んだ。
「なずなからしてほしい」
「で、でも……その、ちゃんとうまくできる自信がなくて……」
「そんなこと気にするな。俺はなずなからなら何だって嬉しい」
「うんと、えっと」となかなか踏ん切りがつかない間も伏黒は急かさず、しかし期待を込めた眼差しを向けている。
その期待を裏切るなんて選択肢はなずなにはなかった。
一大決心をして伏黒に口づける。
さっきはそこまでて口を離していたが、今度は違う。
薄く開いている彼の口に少しだけ舌を入れ、ぎこちなく歯列をなぞっていく。