第30章 断章 ご飯?お風呂?それとも……?
そして待ちかねた夜の時間、
ベッドに腰掛けた2人は甘く唇を重ねていた。
いつもと違うのはなずなからのキスということ。
夕飯、風呂と続いて最後になずな。
予想外の出迎えをしてくれた彼女に伏黒が希望した。
ちゅ、と触れ合っていた唇が離れると、伏黒は名残惜しそうに目を細め、こつりと自分の額をなずなの額に合わせる。
「……もっとしてくれないのか?」
「も、もっと……?」
頬を染めたなずなが自分からキスしてくれるのはとても嬉しい。
でもいじらしくて控えめな彼女のキスは触れるだけのもので、どうしても「もっと深く」と思わずにはいられない。
「そう、もっと……」
ねだるように小さな唇を軽くついばむと、なずなは更に赤くなり、あわあわと目を泳がせ始める。
「そ、それはそのっ、もっと、で、ディープにというか、なんというか、そういうこと……!?」
可愛らしく慌てる様子に思わず頬が緩んだ。
「ああ、もっと深いのが欲しい」
「!」
自分が主導権を取って先に進めることもできなくはない。
きっとなずなは応えようとしてくれる。
だがせっかく彼女が積極的になってくれて、こんなにもいじらしい表情を見せてくれているのに水を差すのは不本意だ。
だから待つ。
こんな姿を見られるのならいつまででも待てる。