第30章 断章 ご飯?お風呂?それとも……?
伏黒はあまりのことに少しの間固まったものの、すぐに立ち直って靴を脱ぎ、手を洗ってからなずなを追いかける。
なずなの方からキスしてくれるなんて滅多にない。
それにさっきの言葉も彼女が自分で考えたというより誰かの入れ知恵と言われた方がしっくりくる言葉だった。
何か訳がある、と確信してキッチンに入ると、案の定、なずなが両手で顔を覆って立ち尽くしていた。
「釘崎とかに何か言われたのか?」
「な、なんで分かったの!?……野薔薇ちゃんからせっかく同棲するなら『ご飯にする?お風呂にする?それとも私?』ってやれって……」
耳まで真っ赤にして目を泳がせるなずなに伏黒も思わず顔が緩みそうになる。
あまりにもベタな入れ知恵だが、結果的にあんなに可愛らしい姿が見られたのだから文句なしだ。
「さっきの……すごく可愛かった。全部欲しい」
「えっ!?え、と、全部……?」
「夕飯と、風呂と、なずな」
「い、いいいっぺんには無理だよっ」
「じゃあ順番で」
「!」
2人で夕飯を作って食べた後は一緒に後片付けをして風呂でも甘い時間を過ごす。
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