第30章 断章 ご飯?お風呂?それとも……?
そもそもお互い忙しいことに加え、やっと2人揃って休めたと思ったら水曜日で不動産屋が休業日ということもあった。
ネットでもいろいろ探しているものの、やはり最後は直接見て決めたいというのが2人の共通意見だった。
苦笑するなずなに野薔薇は肩をすくめる。
「まぁそうなるわよね〜」
野薔薇達同期4人は在学中に一級術師になっており、任務が一緒になることはほぼなくなった。
普段も授業や訓練でかろうじて顔を合わせる程度で、それも最後に4人全員が揃ったのはいつだっけかと頭を捻るくらいに頻度が少なくなっているのだ。
ただでさえ忙しい上に2人の休日を合わせようとするとそれはもう非常に難しい。
伏黒の方もそれは重々承知しているので、卒業までに間に合わずとも焦らずじっくり探そうという相談はしてある。
「で、どういう部屋にするの?アンタ達どっちも稼いでるんだからタワマンとか!?」
「そ、そんな豪華な所は無理だよ……!うーん、あんまり広いと掃除が大変になっちゃうからそこそこの広さで、高専の近くで……」
正直なところ、必要な条件がパッと思いつかないと打ち明けると、スーパーやコンビニの近くが便利だと返ってくる。
「セキュリティも大事にしなさいよ?アンタのことだから空き巣なんかと鉢合わせしても撃退できるだろうけど、部屋にいない時間の方が圧倒的に多いでしょ」
「の、野薔薇ちゃん詳しいね、探したことあるの?」
「高専入学前にちょっとね」
東京で憧れの一人暮らしを……と夢見て調べたはいいが、どこもかしこもとにかく家賃が高く、親の援助を受けるなどもっての外だったため断念したのだ。
結果的に浮いた分をファッションやコスメに使えたから文句はない。