第29章 断章 善意武装ナンパ撃退術
その一部始終を見て虎杖が思わず呟いた。
「ちょっと意外かも」
「なんで?」
「だって渡辺っておとなしいタイプだし、ああいうナンパってもっと派手めな女子とかに声かけるもんじゃね?」
「自分に自信のない男連中は断れなさそうな子狙うのよ」
「そうなんだ」
野薔薇の言葉に目を丸くしつつも納得する虎杖。
確かになずなのようなおとなしいタイプなら強引に押し切られてしまう。
あの男達もそれを狙っているとしたら……
「……それって渡辺大丈夫なの?」
「どう考えても大丈夫じゃねぇだろ」
伏黒は不服そうにしているが、なずなを助けようと足を踏み出すと五条がしつこく宥めてきて、なかなか出られないでいる。
試しに虎杖も挑戦してみたが、五条の妨害を抜けられず結局見ていることしかできなかった。
「ちょっと、ヤバいんじゃないの?周り囲まれかけてるわよ」
野薔薇の声にハッとしてなずなの方を見ると男達が前と左右に立ちはだかり、なずなの姿がほとんど見えなくなっていた。
そんな状況にも関わらず、五条は気楽なまま。
「大丈夫、大丈夫」
「マジで危なくなったら助けにいきますからね」
「恵は心配性だな〜」
「いや、あれは誰でも心配するでしょ」
前に出ようとする伏黒の肩にさりげなく手を置き、牽制する五条に虎杖は苦笑するしかなかった。