第29章 断章 善意武装ナンパ撃退術
「ね、お願い!オレらけっこう困っててさ。お姉さん助けてくれない?」
「も、申し訳ありません!私、方向音痴で、きっとお役に立てないです……!」
手を合わせるナンパ男に頭を下げるなずな。
そんな奴らに謝る必要ねーだろ!?
なずなを除く1年生3人ともそう思った。
しかも、さっきからやたらなずなに手を伸ばしているのが気になる。
腕を掴もうとしたり、肩を抱こうとしたりしているようだ。
なずな自身は気づいているかどうか分からないが、絶妙に身をかわしている。
そして、
「ご、ごめんなさい!本当に勘弁してください!!」
いきなりの大きな声に周囲の人々もなずなの方に振り返った。
「私、信じられないくらいの方向音痴で、あなた方の行きたい場所に連れて行けないって断言できますし、その後この待ち合わせ場所に戻れる自信もないんです!」
「あー……いいよ、いいよ。なんかこっちこそゴメンね?」
周りの注目を集めていると感じとった男達は、ひらひらと手を振ってなずなから離れようとする。
「そんな、でも困ってるんですよね、私も道に迷った時の不安はすごくよく分かります。……せめて警察の方を呼びましょうか?きっと道を教えてくれると思います」
心配そうに眉を寄せるなずなが携帯電話を手に取るのを見た彼らはさすがに焦り出した。
「ホ、ホントにいいって!じゃあね」
引きつった笑顔でそう言うと、男達は慌てて通りの方へ消えていった。
「ホラ、撃退しちゃった」
「マジか。しかも善意100%で」
ニンマリと笑った五条の隣で虎杖はあんぐりと口を開けている。
ちなみに以前五条が見かけた時は、その場で考えついたフォーメーションAで華麗に助けに入ろうとしたところで同じように純粋な善意のみで追い返していた。
ちなみにその後なずなに声を掛けてきた男達のことを聞いたら、
「なんだかあの人達、ボディランゲージが大きくて、手がぶつかりそうだったんだよね」
そもそもナンパだと気づいていなかった。
―了―