第28章 断章 浜辺の誘惑
と歩き出したはいいが、近づくにつれて伏黒に声をかけている3人の顔も見えてくる。
水着はもちろんのこと、メイクも髪型もバッチリ決めて手足の爪も綺麗、サンダルまで可愛い。
それに胸も大きいし……
私より可愛い上に大人の色気的なものは向こうの方が段違いなのでは!?
あのお姉さん達がいいって伏黒くんに言われたらどうしよう……
ただでさえない自信がどんどん萎んでいき、なずなの足は鈍っていく。
すると、
「ねぇ、おにーさんも一緒に行こ?」
女性の1人が軽く首を傾げて上目遣いに伏黒に歩み寄った。
今にも伏黒の腕を取りそうな仕草にパチンとなずなの中の何かが弾け、あれほど重かった足が走り出す。
「あ、あああの!」
なずなが声を上げると伏黒を含めた4人の目が一斉にこちらに向いた。
うぅ……やっぱりあのお姉さん達の方が綺麗で可愛い。
で、でも、
伏黒くんを想う気持ちは私だって負けてないはず……!
華やかな水着のお姉さん達を相手に勇気を振り絞って口を開く。
「わ、私の、だ、大事な人なのでっ、その……ゆ、誘惑しないでください!!」
言ってしまった後でかああっと顔に熱が集まり、急激にいたたまれなくなってきたなずなは伏黒のラッシュガードを少しだけ掴んでその背中に隠れた。
「何この子……」
や、やっぱり、
きっとちんちくりんが生意気言ってって思われてる……!
「可愛いっ!」
「……へ?」
しかし、返ってきたのは思いもよらぬ言葉だった。