第28章 断章 浜辺の誘惑
一方、いつまで経っても姿を見せないパンダはというと……
「……あれ、パンダ君だよね……?」
「それ以外考えられねぇだろ」
「しゃけ……」
2年の3人が目を向ける先にはパンダには程遠い、しかし人間にしては縦にも横にも大きな白い物体が立っている。
それはとあるキャラクターに酷似していた。
「わぁ、ベイ○ックス!ママ、ベイ○ックスいるよ!」
小学生くらいの女児が楽しそうに駆け寄っていくと、実にそれらしく受け答えするパンダ。
大喜びした女児がパンダの腕を引っ張って海へ入ろうとしたものの、母親に止められていた。
その後も母親に諭されてようやく腕を放し、すごく名残惜しそうにバイバイと手を振る女児にパンダも手を振った後、乙骨達の方に振り向く。
「目立ちすぎだろ、アイツ」
やれやれと肩をすくめた真希の少し後ろで乙骨はこう思わずにはいられなかった。
……真希さんも十分目立ってると思うんだけどな。
実際に自分達……正確には真希を見て立ち止まったり、何やら話す者が多い。
「ツナマヨ」
「うん、とりあえず真希さんを1人にしない方が良さそう」
「遅ぇぞ、パンダ」
「すまんな、着るのに手間取っちまって」
「レディより時間かかるってどういう水着よ?ていうかそれ、暑くないの?」
早速真希と野薔薇に詰められるパンダだったが、そこはしっかりいなした。
「完全防水仕様だ。俺は汗かかないし、空気も必要ないからこうなった。これなら海岸にいてもコスプレで済むしな」
「海でそのコスプレって見てるだけで暑いよね」
「ツナマヨ」
パンダの体型にジャストフィットしているこの水着は、当たり前だが学長特製だ。
1、2年生で海に行くと話したら急ピッチで作ってくれた。
「パンダ先輩の水着、すげーな」
近くから改めて見ると、パンダ模様は全然透けていないし、尖った爪は見事に隠れているし、細部まで異様に凝っている。
「コレ、1ヶ月くらいで作ったんスよね?」
「この1ヶ月は激務だったろうね、学長……」