第7章 日々是特訓
はたして自分に教えられるようなことがあるのかと不安を覚えながら、なずなは伏黒に剣術の基本を教えるため、木刀を手に取った。
「……硬い……」
じとーっとなずなが目をすがめて見ているのは、向かい合わせになっている伏黒の剣筋。
「?」
「伏黒くん、硬いよ。もっと柔らかく持って」
「こうか?」
「違う、それじゃ叩き落とされちゃう!そうじゃなくて、手首をもっと柔らかく!」
バシッとなずなが伏黒の木刀の切先を打つと、そこまで強い力を受けた感覚がないのに伏黒の手から木刀が落ちる。
「私も人に言えるほどできてないけど、刀は死んでも離さないように」
落ちた木刀を拾い上げ、伏黒に渡す。
「……でもオマエ、前に木刀投げてきただろ。あれはいいのか?」
「あ、あれは戦術のうちだよ!」
伏黒の冷静なツッコミになずなは赤くなりながら言い繕う。
あの時、真希から行儀悪くやれと言われ、思いつきで試した投擲だったが、今から思うと剣術としては間違ったかもしれないと少し反省する。
伏黒にビシバシと指南するなずなの様子を見て、野薔薇は目を見張った。
普段の少しオドオドした様子からはちょっと考えられない。
「なずなって見かけによらずスパルタなのね……」
野薔薇の隣にいた真希も思わず吹き出した。
「ま、元々が武士の家系だからな。なずなもああして教わったんだろ。剣術に関してはそれこそ禪院家より厳しく躾けられてるんじゃねぇかな」