第7章 日々是特訓
気を取り直して再開したが、剣術に慣れていない伏黒の粗がどうしても目についてしまう。
「うーん、まっすぐ振れてないかな。……まっすぐなのとブレてるのとでは、相手にかかる重さが全然違うの」
ブレてるとこんな感じ!とわざと剣筋をずらして伏黒に打ち込む。
軽い衝撃、うまく受ければ弾くこともできそうだ。同時に軽くショックを受ける。
「俺、こんなだったのか……?」
「ううん、今のは極端にやっただけだよ」
なずなは再び木刀を構える。
「そして、まっすぐだとこう!」
木刀がぶつかる乾いた音が響く。
音も先程とはハッキリ異なるし、衝撃もビリビリと手に伝わってくる。
「まっすぐだと重さが乗って威力も出る。逆にブレてると軽いから流しやすいし避けやすいの。伏黒くんはブレているのを呪力で強化して、威力を出してるって感じだから、まっすぐ振れるようになったら、もっと強い斬撃になるんじゃないかな」
ただこれは教えられたからといって、一朝一夕でできるようにはならない。
刀への慣れは必須だろう。
「素振りしよう、素振り。1日500回くらい。木刀より実戦で使う黒刀で素振りするのがいいと思うよ」
木刀より重いから筋トレにもなるし、手に馴染むのも早くなる。
本当は訓練も黒刀の方がいいのだが、伏黒が黒刀でなずなが木刀では容易に木刀が切られてしまうし、かといってこちらも鬼切を持つとなると、伏黒を切りつける危険があるわけで……
なずなには加減できる技量も伏黒に鬼切を向ける勇気もなかった。
「恵、メチャクチャ尻に敷かれてたな」
そのパンダの一言に一番に反応したのはなずなだった。
ハッとした後、しおしおと座り込み、顔を覆ってしまう。
「……偉そうにして、ごめん……」
「えっ、ダメージ受けるのそっち?」
伏黒はというと、先輩のいつもの軽口だとスルーを決めこんでいる。
「別に偉そうってほどでもなかっただろ。実際に俺ができてなかったってことだし」
なずなはなおも首を横に振る。
「伏黒くんは私にはできないこと、たくさんできるもん……」
少年院から助け出されたときがまさにそうだった。
なのにそれを棚に上げて自分はすごく偉そうにしていた気がする。
穴があったら入りたい。
文字通りそんな気分だった。