第28章 断章 浜辺の誘惑
一方、男子寮では―……
「こんぶ!」
「あ、確かに!浮き輪とか持っていきたいよね」
「全員泳げますよ」
「伏黒はでっかいシャチとか持ってきたくねーの?こういう時にしか遊べないじゃん」
海に何を持っていくかで盛り上がる狗巻と乙骨に対して冷静に意見する伏黒、そして虎杖は先輩2人に同調する。
ちなみにこの場にいないパンダも濡れるのが嫌いなだけで泳げる。
浮き輪は膨らませると結構かさ張るし、海で使った後は洗わなければいけない、その手間を考えると伏黒はできることなら持っていきたくなかった。
無論虎杖が言っているシャチはもっと手間がかかる。
しかし、伏黒以外の3人はそんなことはお構いなしだ。
次いつ合うか分からない揃っての休みなのだから、目一杯楽しみたい。
「遊ぶことだけ考えようぜ、伏黒〜」
「しゃけしゃけ〜」
「後片付けも皆でやればすぐ終わるよ。せっかくの海なんだから楽しもうよ」
「……分かりました」
伏黒もここまで言われて反論する理由はないので頷いた。
のだが……
「にしても釘崎達、どんな水着なんだろうな?」
「オイ」
「伏黒だって気になんねぇ?」
男子特有の話題に移っていくのを阻止しようとするが、予想外なことに先輩達も会話に入ってきた。
「この前、真希さんが釘崎さんと渡辺さんと一緒に水着買いに行ったって言ってたけど……」
「明太子」
「真希さんってどんなの着てもヤバそう」
「しゃけ」
「虎杖君も狗巻君もストレートだね……」
「そういう目で見たら真希さんと釘崎に殺されそうですけど」
「釘崎も結構スタイルいいし、似合う水着選んでそうだよな」
「人の話聞いてたか?」
「いいじゃん、話題にするくらい。伏黒も渡辺がどんな水着なのか気になるだろ?」
女子3人組の中では一番控えめなスタイルだろうから、大人っぽい水着より可愛い感じが似合いそうと勝手にいろいろ想像する虎杖。
無論伏黒も気にならないと言えば嘘になるが、いくら友人といっても他の男がなずなのあれこれを想像しているのは面白くない。
どんどん険しくなる伏黒の表情を見た狗巻が慌てて虎杖の肩を叩き、そこでようやく虎杖も気づいた。
「渡辺のことちょっとでも変な目で見たら伏黒に殺されそう……!」
「しゃけぇ……」