第7章 日々是特訓
「で、何にする?……刀ならこれ、長物ならこのあたりが使いやすいか」
「ちょっと、待っ……!」
次々と投げてよこされる呪具の数々をなんとか全部受け止めて、影に沈めていく。
どのくらい入るか分からないが、まだ余裕はありそうだ。
取り出すのも問題なくできる。
いくつか沈めて取り出してを繰り返していると、横から視線を感じた。
目を向けるとなずなが興味津々な顔で伏黒の影を見ている。
「……渡辺もやってみるか?」
「いいの!?」
影に沈みかけている大刀を手渡してやる。
なずなは受け取った大刀を伏黒の影にゆっくり沈めていく。
「なんだか、水とか砂の中に沈めてるみたいな感触だね……わぁ、全部入っちゃった」
なずなの背より長い大刀がすべて影に飲み込まれる。
「この影、人間も入れたりするの?」
「試したことないけど、やめた方がいいと思うぞ。たぶん息ができない」
「あ、確かにそうだね……」
「……まさか、入りたかったのか?」
「えへへ、実はちょっとだけ……」
なずなは眉を下げて笑いながら、頬を掻いた。
「……恵、これはどうだ?」
真希が手に持っているのは三節棍だった。
「伏黒くん、三節棍も練習してたの?」
「いや、実物を見るのも初めてだ」
「確かに三節棍はやってないが、この游雲は使えるようになっといて損はねぇぞ。なにせ特級呪具だ。攻撃力ならその辺の呪具とは比べ物にならないからな」
三節棍、練習したこともないが、呪具を運べるこの影の特性なら、今使えなくとも他の術師の補助として使える。
自分が借りているからといって、使うのが自分だけとは限らないのだ。倉庫に眠らせておくより、強い使い手に使われた方がよほど役に立つ。
「分かりました、それも借ります」
真希から游雲を受け取り、それも影に沈めた。