第26章 断章 優しい優しい帰り場所
「……っ、何だ!?」
一方、突如背中に感じた重みに伏黒は驚いて飛び起きた。
背後に目を向けると、静かに寝息を立てているなずながいる。
単独の出張任務と立て続けに急遽入った任務から帰ったのか。
黒い仕事着を着たまま寝入っているところを見るに、疲れ切って帰ってきたことが窺えた。
久々に見る彼女の寝顔は穏やかで、起こすのもためらわれる。
休ませてやりたい。
しかし、このまま寝かせたら疲労が抜け切らないだろう。
「なずな、起きられるか?」
「……ぅ、ん……」
軽く肩を揺すって声をかけるが、それしきのことで起きるはずもなく、なずなは少し身じろぎするだけで眠り続けている。
仕方ない……
伏黒はベッドから出て、なずなのクローゼットから寝間着を出し、安心しきった顔で眠る彼女の襟元をくつろげる。
「なずな、せめて着替えろ。そのままだと疲れ取れねぇぞ」
「んー……ぉ、ろ……」
「?」
少し覚醒したのか、何か言っている。
「……ぉふ、ろ……入る……」
そういえば彼女は自他共に認める風呂好きだった。