第25章 断章 呪具女子!
悶々と考え続けていると、向こうから白い大型犬が走ってくるのが見えた。
「あ、玉犬!」
わふっ、と玉犬も応えてくれてなずなの不安も和らいだ。
自分の隣に駆け寄ってきて、きちんとおすわりして尻尾を振る姿はとてもかわいい。
思わずその毛並みを撫でたい衝動に駆られてしまう。
いきなり触ったら玉犬は嫌がるかな……?
伏黒くんに怒られちゃうかな……?
そわそわ
うずうず
…………モフリ
結局なずなは誘惑に耐えることができなかった。
まずは少し頭を撫でてみて、玉犬が嫌がらなかったので、首周りをわしゃわしゃと撫で回す。
「よしよしよし〜」
しゃがみ込んで白い毛並みを堪能し始めると、なずなの背後から草を踏みしめる音がしてきた。
しかしなずなは気づかない。
「渡辺、こんな所に……!」
「ひゃあっ!ふ、伏黒くん!?……あの、これは、その……」
ビクリと肩を跳ねさせ、バッと玉犬から手を離したなずなは慌てて振り向く。
そこには眉根を寄せる伏黒の姿。
勝手に玉犬に触ったから、怒ってる……?
なずなの額に冷や汗が伝う。
「いい加減、道は覚えられ……」
「か、勝手に撫でてごめんなさい!……へ?」
伏黒の言葉をまともに聞かず、なずなは真っ先に頭を下げ、その姿勢のまま遮ってしまった言葉を反芻して首を傾げた。
「だから、いい加減道は覚えられるだろ」
「ぎょ、玉犬のことじゃ、ない……?」
「別に玉犬は触っても構わねぇけど……でもさすがに任務の時はやめろよ?」
任務中に油断して負傷するなんてことがあったら笑えないし、そうなれば伏黒も玉犬を使いにくくなる。