第24章 おかえり
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悪夢のような光景だった―……
強大な力に押し込められ、自分の身体を好き勝手に使われ、虎杖を蹴り飛ばし、なずなの細い首を締め上げた。
やめろ!
やめろっ!!
必死に抵抗してなんとか首を折ることは阻止したが、今度は彼女の顔面を鷲掴みにして頭から叩きつけた。
他にも鵺で真希を攻撃し、来栖の腕を噛みちぎり、戻ってきた虎杖に無数の斬撃を浴びせた。
―宿儺が伏黒で何か企んでる―
回游に参加する前、虎杖からそう聞いていたのに、容易く宿儺に指を飲まされてしまった。
肉体を乗っ取られてしまった。
主導権を取り戻そうともがいて、足掻いてもほとんど何の効果もなく、仲間達が傷ついていくのを見ていることしかできなかった。
最悪だ。
どんなに傷つけてくれても構わないから、止めてくれ、
誰か、俺を止めてくれ……!
殺してでも止めてくれ!!
どんなに叫んでも声は出ず、懇願は届かない。
……と諦めかけた時、
肩に鋭い痛みが走り、目の前には苦悩に顔を歪めたなずな。
ああ、
また、
なずなを傷つけてしまった……
次の瞬間、伏黒の意識は暗い壁に阻まれた。
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そこから何が起こったのか分からない。
身体を乗っ取られている感覚は無くなったが、自分でも身体を全く動かせなかった。
何も見えない暗闇、
何も聞こえない静寂、
痛みも暑さ寒さも感じず、戦闘中のようなピリついた空気感もない。
俺は何をしていた?
なずな達は……?
ここに寝ていていいのか……?
思考も薄幕がかかっているかのようにはっきりしない。
まどろんでいると、ふと水滴が当たるような感覚がして、意識が一気に浮上した。
重たい瞼を上げると、まず目に入ってきたのが無数の呪符。
周りを見ると医療用のベッドの上に寝ている状態だと分かる。
そして何より……
押し殺したように小さく聞こえる嗚咽と手の甲に当たる雫。
水滴が当たったような感覚の正体はこれだ。
「……なずな……?何泣いてるんだ?」