第24章 おかえり
「……なずな……?何泣いてるんだ?」
握っていた伏黒の手が動き、なずなの頬を伝う涙を掬った。
「っ!」
なずなは大きく目を見開いて息を呑む。
鬼切がなくたって分かる。
恵くんだ、
恵くんが返ってきた……!
一瞬だけ止まった涙が今度は嬉し涙になって溢れてくる。
「おかえり……っ、おかえり、恵くん……!」
泣き止まないなずなを心配して伏黒がベッドから起き上がろうとすると、慌てて彼女に止められた。
「わ、私、皆を呼んでくるから、恵くんは待ってて!」
五条から宿儺は抑え込まれていると言われてはいるが、それで全員が納得しているとは限らないため、伏黒はこの病室から出ない方がいいのではという考えからなずなはすぐに立ち上がって急いで病室を出る。
おとなしく待っていると、すぐに大勢の足音が近づいてくるのが聞こえてきた。
真っ先に病室に飛び込んできたのは虎杖だ。
「伏黒!身体何ともない?大丈夫!?」
「早く入ってください!後ろがつかえてます!」
虎杖のすぐ後に来栖が顔を出す。
ただでさえ狭い病室があっという間にすし詰め状態になり、心配や労いの言葉をかけられた矢先、やれ「起きるのが遅い」だの「なずなを泣かせたな」だのと責められる。
どれも事実なので伏黒が素直に謝ると、今度は「素直すぎる」、「本当に恵か?」と先輩達は驚愕し、五条には爆笑された。
そんな仲間達の態度に感じる若干の苛立ちでさえ、懐かしく感じる。
だが、それに言い返すより大事なことがあった。
ベッドから起きてなずなの姿を探すと、入口に近い場所に縮こまっており、急いでそちらへ向かい、一番心配してくれたであろう彼女を抱き寄せる。
真っ赤になったなずなの目から再び涙が流れ落ちる。
「また泣かせた」などと背後から聞こえたが、そんなことは無視してしっかりと抱き締めた。
「ただいま、なずな」
「うんっ、おかえり、恵くん……!」
―了―