第24章 おかえり
伊地知から死滅回游の総則を聞き、五条は顎に手を当てる。
ここまで大規模かつ複雑な儀式は見たことも聞いたこともない。
実際、羂索はこの準備に1000年もの歳月をかけていたのだ。
何が彼をそこまでさせた?
死滅回游の目的が天元と日本中の人間を同化させるための慣らしだとして、なぜそんな大それた同化を実行したがっていたのか?
それに羂索を殺した今、何をしたら天元との同化が始まるのかも謎だ。
死滅回游が終わったら同化が開始されるのか?
それとも何か発動条件があるのか?
何もかも分からない中で迂闊に死滅回游を終わらせるのは危険極まりない上、終了条件も到底容認できないものなので、ルールに従って回游を終わらせる選択肢はないものと考える。
ではどうやって同化を阻止するのか?
天元と日本中の人間、どちらかが欠ければあるいは……
そう考え至ったものの、さすがにそれは最終手段だと胸に仕舞う。
死滅回游に対してはまだ情報収集が必要だ。
ならばまず目先は津美紀だろう。
「津美紀に受肉してる術師を剥がす方法は見当ついてるの?」
「はい、おおよそは。九十九さんが遺していた魂についての研究記録を参考にいくつか挙がっています。ただ事前に試すことができるかどうか……」
「別に難しくねぇだろ。死滅回游の泳者で受肉してる奴を適当に捕まえてこればいいだけなんだから」
「た、確かにそうですが……」
さらりと物騒なことを言ってのける五条に伊地知は顔を引き攣らせた。