第24章 おかえり
「野薔薇ちゃんは真人の術式を受けて……今も意識を取り戻してません。恵くんは、五条先生に見てもらいたくて、早く来てくださいっ!」
いつになく必死な形相に変わったなずなが地下に続く階段を示し、五条を先導するように駆け降りていく。
なずなについていった先には結界が張られた病室があり、そこに伏黒がいることも感じ取れた。
迷わず中に入るなずなに続くと呪符がびっしり貼られた室内のベッドに伏黒が眠っている。
その呪力を見た五条は目を見張った。
「これ、どういうこと?」
「み、3日前に虎杖くんが宿儺に乗っ取られて、宿儺が虎杖くんの指を宿儺の指に変えて、恵くんに無理やり飲ませたんですっ、それで宿儺が恵くんに受肉して、真希先輩と虎杖くんと来栖さんと協力して止めようとしたんですけど、来栖さんが大怪我して……それから、それからっ」
支離滅裂になっていくなずなの肩に手を置き、ゆっくり声をかける。
「なずな、まずはちょっと落ち着こう。そもそもなんで悠仁は宿儺に主導権を渡したの?」
「前に少年院で虎杖くんは心臓を抜かれましたよね?その心臓を治す代わりに宿儺と縛りを作っていたみたいなんです。……多分『ケイカツ』という言葉をトリガーに1分間主導権を渡すっていう……その間は誰も殺したり傷つけたりできないと言ってました」
「宿儺が?」
「はい……」
心臓を抜かれ、死んだと思われていた虎杖が目覚めた時に「心臓を治す条件を持ちかけられなかったか?」と尋ねたのを思い出す。
その時は何か話したことは覚えているが、話の中身が思い出せないという返答だった。
抜け目ない宿儺のことだ。
縛りの内容を忘れるという条件もつけていたのだろう。
あの時既に虎杖から肉体を乗り替える算段をつけていたということだ。
そして、乗り替え先に伏黒を選んだ、と。