第24章 おかえり
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同じ頃、羂索はここから遥かに離れた場所にいる呪霊が祓われたことを察知し、泳者を狩る手を止めた。
獄門疆の封印が解かれた……?
薨星宮で取り込んだ天元から獄門疆“裏”のことは聞いたが、高専はもう天使と協力関係を築いたのか。
だがたとえそうなったとしても五条悟は獄門疆“裏”から解放されるのではなく、出てくるのはこちらが所持していた獄門疆からだ。
そして、獄門疆はすでに羂索の手にはなく、ある場所に置いてきている。
もし封印が解かれても即死を免れることは不可能な場所に……
しかしその数分後、目の前に降り立った気配に小さく息を呑んだ。
「……最深部は8000mの日本海溝、そのプレートの沈み込み帯に獄門疆は置いてきたんだよ。勿論二重三重の封印の中に検知器としての呪霊も入れてね」
先程感じたのはその検知器用の呪霊が祓われた気配。
羂索は内心の驚愕を顔に出さずに淡々と続ける。
「取り込んだ天元から“裏”のことは聞いていたからね、仮に封印を解かれたとしても君を殺せるように」
日本海溝の水圧は約800気圧、つまり地上1気圧の800倍もの圧力がかかる。
人間が生身でいれば一瞬で潰れる世界だ。
仮にその高圧力を防ぐ手段を持っていたとしても呼吸はできず、一気に浮上すれば水圧差で意識を失い、溺死は免れない。
そんな場所から生還できる者などいるはずないと……
「……マジでどうなってんだよ、君は」
羂索が視線を上げた先―……
そこには六眼を露わにした五条が立っていた。