第1章 妖刀事件
「……んぅ、……あれ?」
なずなが目を覚ますと、いつの間にか別の部屋にいた。
ここは、父の部屋だ。
目の前には伏黒と五条がいる。
「目が覚めたみたいだね、気分はどう?」
「えっと……あの、私、斬られたと思うんですけど……」
そう言いつつも痛むところはない。
身体を確認してみても、大きな怪我はなく、混乱する。
「お、お父さんは……?」
「……僕が駆けつけたときには、もう亡くなっていたよ」
なずなは息を呑む。
「簡単に言うと、比呂彦は鬼切から呪いを受けていた。……鬼切の世代交代の呪いについては、聞いたことある?」
「は、はい、鬼切が次の当主を選ぶと、いつの間にかその人の枕元に鬼切があるという呪いです。世代によっては傍流の家系の人も鬼切に選ばれます」
現当主の父も直系ではない。しかもその前は祖父ではなく、京都にいる親戚が当主だったらしい。
それが父から聞いた鬼切の呪いだ。
呪いには違いないが、その程度の呪いであんな風に乱心するだろうか。
伏黒が疑問に思いながら五条を見ると、五条も口を引き結んでいる。
「……それが鬼切の呪いの全貌ではないんだよね」
「え……?」
五条はなずなに冷静に聞いてほしいと前置きし、鬼切の呪いを詳らかにした。
「普通はなずなの言う通り、次期当主の枕元に現れて世代交代して終わりだ。だが、現当主が次期当主に鬼切を渡さなかった場合、鬼切は現当主に取り憑いて自刃させる」
なずなも伏黒も言葉を失う。