第24章 おかえり
「……不可能ではないが、リスクはほとんど変わらないだろう」
「なんで!?」
冷静に答える声に虎杖が問い返すと、天使は同じ調子で続けた。
「まず1つ目の問題は“邪去侮の梯子”で無効化する術式の順番。堕天は鬼切の封印の内側だから先に封印を無効化することになる。瞬間的に封印が解けるんだ。堕天ならその一瞬で表出し、私と華を殺せるだろう」
宿儺を抑えているのは鬼切のみなので、その封印がなくなってしまえば宿儺は自由に動ける。
たとえ一瞬でも邪魔者を片付けるには十分だろう。
「2つ目は出力の問題だ。堕天に有効なレベルまで出力を上げると、ピンポイントでの行使は厳しい。結局少年の肉体をかなり傷つける。君も最大出力の“邪去侮の梯子”は見ただろう?」
なずなは伏黒の肉体が宿儺ごと灼けていく光景を思い出し、唇を噛んで俯く。
「……最も確実かつ周囲への被害も出ない方法は1つ、昏睡状態の少年を今のうちに殺すことだが……」
「そんなの絶対にダメです」
なずなと来栖の声が重なる。
「そう言うと思ったよ」
もし天使が独立していたのならやれやれと肩をすくめているような声色だ。