第24章 おかえり
「今の伏黒の状態を話しておく。負傷は肩の切り傷のみ、心拍や呼吸も問題ない。ただ、何故目覚めないのかが分からなくてな」
その説明を聞いてなずなが否応なく思い出すのは津美紀のことだ。
呪いを受けて倒れ、そのまま長期間目覚めず、起きたと思ったら万という術師に肉体を支配されている状態だった。
もし恵くんも同じようなことになっていたら?
息を潜めた宿儺が鬼切の封印を破る時を窺っていたら?
……今の私には何もできない……
でも、だからといってこのまま黙って見ている訳にはいかない。
私には何もできないかもしれないけど、乙骨先輩をはじめ、ここには色々な人が集まっている。
宿儺が起きる前にどうにかする手段だってきっと……!
伏黒の手を握るなずなの手に力が入る。
「ありがとうございました……あの、来栖さんにも会えないですか?」
「ああ、病室は2階の213だが……何か話すのか?」
「はい、来栖さんと天使さんなら封印ごと宿儺を消せないかなって思って……」
伏黒が起きないと聞いてから今までのわずかな時間で考えたのかと家入は瞠目する。
「……それは聞いてみる価値はあるな」
「はい、封印している部分だけをピンポイントで消せれば恵くんへの身体ダメージも抑えられますし……あの、もし宿儺を消すことができたら、恵くんの拘束も解いてもらえますか?」
「ああ、完全に消滅を確認できたら拘束する理由もなくなる」
「ありがとうございます……!」
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