第7章 日々是特訓
「はあぁぁー……」
さっきの体たらくを思い起こして、なずなは深い深いため息をつく。
今まで同じようなことは何度もあった。
おそらく過去一番ひどかったのは父の指導で木刀を持った兄の手を思いっきり打って骨折させてしまったことだ。
それでもこんな風に動けなくなるなんてなかった。
今回も状況は似てるのに、伏黒くんの血を見て、それが自分のせいだということにすごく焦った。
伏黒くんの血が止まっても、私の中の焦りは全然消えなくて……
それに引きずられて判断力も動きも鈍くなった。あまりにも動けなくて、きっと真希先輩も伏黒くんもがっかりしたに違いない。
「明太子?」
俯いていたなずなを覗きこむようにして、狗巻が顔を出した。
「あ、狗巻先輩……野薔薇ちゃんの訓練はいいんですか?」
「しゃけ」
狗巻はうなずいて、野薔薇の方を指さす。
なずなもそちらに目を向けるとスポーツドリンクを片手に、パンダと話している野薔薇がいた。
どうやら休憩中のようだ。
再びなずなの方に向き直った狗巻は首を傾げる。
「ツナマヨ、明太子?」
「あの、実は……今日は伏黒くんと試合してたんですけど、膝蹴りして怪我させちゃって……伏黒くんは大したことないからいいって言ってくれたんですけど、私、その後の試合からうまく動けなくて……真希先輩にも注意されましたし、伏黒くんにも気を遣わせちゃって、その、ダメダメだなって……」
改めて説明したなずなはなぜか泣きたくなった。
「高菜、梅干し、ベーコンエッグ!」
「えっと、気分転換……ですか?」
「しゃけしゃけ。塩むすび」
口をへの字に引き結んでいるなずなの頭を狗巻の手が優しく撫でる。
悩んでも仕方ない、気にするなと励まされているようだった。
「……ありがとうございます。気分転換、やってみます」