第7章 日々是特訓
血が止まった後、打ち合いを再開したが、なずなの様子がおかしい。
それまでは真希の合図と同時に伏黒へ向かってきていたが、ジリジリと出方を伺っているような動きだ。
「なずな、もっと本気出せ!ガタガタだぞ!」
「は、はいっ」
焦れた真希の言葉に返事はするものの、やはり動きが鈍い。
だが、伏黒の方も引いてやるつもりはない。
乾いた音を立てて、棍と木刀がぶつかる。
先程までとは打って変わって、伏黒の攻撃を木刀で受けたなずなは力負けして、どんどん後退する。
「……っ!」
どうしよう、ダメだと分かってたのに、真正面から受けちゃった。
このまま伏黒くんが力を緩めてくれなければ、押し負ける。
それに、さっきから全然動けてない。
別に怪我をしてるわけじゃないのに……!
なずな自身もどうしてこんなに動けないのか分からないまま、伏黒に一本取られてしまった。
「気にするな、さっきのはまともに受けた俺が悪い」
萎縮してしまっているなずなにそう伝えるが、それ以降はまともに相手にならなかった。
結局、伏黒となずなの試合形式の特訓は中断、それぞれ分かれての特訓に戻った。
「……なずなのヤツ、加減するのが下手くそなんだよな。ゼロかフルスロットルしかない」
「確かに。呪霊を祓うときもあの性格なのに容赦ないというか、思い切り良すぎるくらいですし」
なずなを眺めて目を細める真希に伏黒も同意する。
「相手のことはよく見えてるんだよ。さっきだって、木刀じゃオマエに届かないとすぐ見抜いてガラ空きの顔面に狙いを切り替えたからな。長物使うとどうしても両手が塞がりやすいし」
真希もなずなとは何度か手合わせしていて、動きは分かっていたつもりだったが、まさかここまで動けなくなるとは予想外だった。
「今度の交流会もそうだが、呪術師になった以上は人間、呪詛師と戦うこともある。その時動けませんじゃ、なずなの方が殺されちまう」
人間相手に萎縮してしまうのは、悪いことではない。むしろ正常な反応だ。
だが、なずなは呪術師、それを克服しなければ、文字通り命に関わる。