第24章 おかえり
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虎杖には事態が動いた時にすぐ知らせてくれるよう頼み、病室で反転術式の特訓が始まった。
「まずは呪力を掛け合わせてプラスのエネルギーにするところからだね」
乙骨はこんなふうにと手に正の呪力を纏わせてみせる。
普通の呪力とは正反対の柔らかい力の揺らぎが見える。
しかし、いざ自分がやろうとすると一筋縄ではいかなかった。
「う、うーん……?」
呪力の練り方を変えてみても何も変わっていない。
負の呪力同士を掛ければ正のエネルギーになるという理屈は理解できるのだが、自分の呪力を掛け合わせる感覚が掴めない。
ぜ、全然ダメだ……
そもそも1つしかない呪力をどうやって掛け合わせればいいんだろう?
根本的なイメージが違うのかな……?
「あの、具体的なイメージとしては自分の呪力を2つに分けて掛け合わせる……という感じですか?」
「そうだね、2つに分けてもいいし、自分が練った呪力をもう1つ分用意するっていうイメージでもいいと思うよ」
「む、難しい……乙骨先輩はどうやって練習したんですか?」
「あー、それは……えーと……」
反転術式を自在に扱っている乙骨はきっと並々ならぬ努力をしたのだろうと思って尋ねると、彼は気まずそうに視線を泳がせ始める。
「……去年の百鬼夜行の時、真希さん達が大怪我を負って、治さなくちゃって無我夢中で使ったらできちゃったんだよね。だから練習っていう程の練習はしてなくて……」
予想の遥か上をいく答えになずなは目を見開いて固まってしまった。
さすが特級術師の乙骨先輩……!
最初から次元が違ってた……!