第7章 日々是特訓
互いに一本取って、取り返してを繰り返し、何本目かで真希から忠告を受けた。
「そろそろかもな。恵、頭上に注意しとけよ」
しかし伏黒はよく理解できず、疑問符を浮かべる。
「頭上?」
真希の始めという合図で頭上注意の意味がやっと分かった。
なずなが地面を蹴ってジャンプし、文字通り上から攻撃を仕掛けてきたのだ。
なずな自身の体重も加わり、木刀とは思えない重い一撃。伏黒はなんとか棍で受け止める。
うそ、これも止められちゃうの……?
真希先輩には何度か仕掛けたことがあるが、伏黒くんは初見なはず。
こちらの有利な位置取りに伏黒くんは不利な体勢、今の自分が出せる最大限の力を出したつもりだったが、それでも届かない。
だったら……!
木刀の重さが緩んだと思った瞬間、棍を掴まれる。
そして、そこを支点に身体を捻り、なずなの膝がきれいに伏黒の頬に入った。
突然の横からの衝撃に思わず膝をつく。
「あ、ご、ごめんなさいっ!」
体勢を崩した伏黒になずなが慌てて謝った。
チッ、口の中を切ったか。
伏黒が口に溜まった血を吐き出す。
「!?」
その血を見たなずなの顔がみるみる青くなる。
「ご、ごめん、なさ……」
「一旦止め。恵は血が止まるまで傷口押さえてろ……なずな、気にすんな」
止血ついでに休憩にするが、その間もなずなは伏黒の様子をおろおろと伺っている。
「だ、大丈夫……?」
「別に平気だ」
口の中に鉄っぽい嫌な味が広がっているが、任務の時に負う怪我に比べれば、なんともない。
「本当に、ごめんなさい……」
「いいって、大したことない」