第24章 おかえり
「無いなら仕方ねぇ。2人を家入さんの所に運ぶぞ」
虎杖から鬼切が見つからないことを聞いた真希は即座に次の方法に切り替える。
死滅回游が始まり、高専の方針が決まった後、この東京第1結界のすぐ外にある病院を借り上げ、拠点としているのだ。
家入もそこに常駐しており、負傷者の救護ができる体制を整えている。
先の渋谷事変の後、東京都民へ避難指示が出され、無人だったからこそできた荒業だ。
真希が意識の戻らないなずなを抱き上げるのを横目に虎杖が歯噛みした。
「真希先輩が先行で渡辺を連れてってくれ。高羽が来栖を見つけ次第、俺も伏黒を連れてく。途中で宿儺が出てくるようなことがあれば置いていってくれて構わない」
少し悩んだ真希もそれが今取り得る最善と考えて頷く。
「……そうだな、こんな状態のなずなを抱えて宿儺とは戦えねぇ。外の拠点には憂太も向かってるはずだ。仙台結界からだからまだ着いてねぇと思うけど、もし宿儺と戦闘になったらなるべく早く憂太も連れてくる」
万が追加した総則はコガネを通じて乙骨にも伝わっている。
津美紀救出のため点を譲渡した直後、高専側が意図していないタイミングでの追加になるため、何かあったと察して仙台結界からこちらに移動し始めてはいるだろう。
空間転移できる術式を持つ憂憂と合流していればより早く東京に辿り着ける。
そして乙骨が間に合えば再び宿儺が出てきてもきっと対抗できる。
「……あと、これは最悪の事態だったらだが、もし来栖が死んでいたら遺体は回収してくれ」
宿儺に片腕を喰い千切られ、高層ビルから投げ捨てられた時のことを思い返す。
あの状況で生きていられるかと考えると、その可能性は極めて低い。
運良く生きていたとしても広範囲の鵺の雷撃を受けていたら、それこそ生存は絶望的だ。
しかし、五条の封印を解くには天使の術式が不可欠。
そこで真希が最終手段として思い当たったのが乙骨だった。
乙骨の模倣の術式なら天使の術式もコピーできる。
だがそれには来栖の身体の一部が必要なため、遺体を回収しなければならない。
虎杖が責任を感じてしまうと思い、そこまでの深い事情は明かさず、真希はなずなを連れて東京第1結界の外へ走り出した。