第24章 おかえり
なずなが自ら結界を解いたのと裏梅の作り出した氷塊が結界に直撃したのがほぼ同時―……
内部で何が起こっていたかなど知る由もない虎杖と真希は当然一方的に結界が破壊されたと思い込み、虎杖に裏梅の相手を任せた真希が砕けた結界の方へ走る。
外部から結界を破壊されたのだ。
なずなの目論見が最後まで果たせず、宿儺が出てくる可能性が高い。
そして、領域展開直後のなずなは一時的に術式が使えない。
非常に危険な状況だ。
真希の眼が2つの人影を捉える。
小さい方に手を伸ばそうとしたまさにその時、分厚い氷の壁に阻まれた。
「なずなっ!!」
わずかに届かなかった手をきつく握り締める。
真希が立ち止まった先にいたなずなは傷だらけで氷の中に閉じ込められた。
まずい、
領域を壊された直後に氷漬けにされた……!
今は術式が焼き切れて自動の反転術式を使えない上に結界を張った時に持っていたはずの鬼切もなぜかなくなっている。
かといって安易に氷を割ることもできない。割れば中にいるなずなごと砕けてしまうからだ。
早く氷を解かして救出しなければ。
続いて真希は素早く視線を走らせ、この場に出てきたであろうもう1人、宿儺を睨む。
だが、
「!」
臨戦態勢の真希の目の前で伏黒の身体が崩れ落ちて倒れた。
完全に意識を失っており、露わになっている上半身や顔に浮かんでいた紋様も消えている。
何が起こってるんだ?
なずなが何かやったのか?
真希が見る限り宿儺も、そして伏黒も目覚める気配がない。
頭が混乱しかけるが、何らかの理由で宿儺が動けないのであれば不幸中の幸いだ。
宿儺が目覚める前にまずはなずなの救出を……
氷の中のなずなは右眼が完全に潰され、顔のあちこちに殴られた痕がある。顔だけ殴られたということはないだろうからおそらく服の下も。
文字通り満身創痍、この氷と低温に命を奪われるのも時間の問題だった。