第23章 本領
対する宿儺は異様な軌道の斬撃を片腕で捌きながら、鬼切の術式について考えた。
呪力操作の感覚から反転術式が使えなくなった訳ではない。
にもかかわらず、切り落とされた腕を再生できない。
それに呪力での防御も強弱関係なく全く機能していない。
これらのことから導き出される鬼切の術式は……
“鬼”という概念にまで達する斬撃。
「名は体を表す、か」
俺が鬼と認識される限り防御不可、そして斬られた傷は“鬼を斬った”という事象が確定され、再生不能ということか。
だが、それも振るう人間がいなければ無意味。
小娘を解で刻めば済む。
なずなを蹴飛ばし、再び近づかれる前に宿儺は手をかざした。
間髪入れず宿儺の解がなずなに襲い掛かる……
と思いきや、
鋭い無数の刃はなずなに届く前に霧散した。
「……何だ?」
思い通りに術式が発動しない。
領域展開直後の術式が焼き切れた時とはまた違う感覚。
己の手を開いて閉じて感覚を確かめるが、動作には特に支障は出ていない。
次の瞬間には宿儺の立つ場所になずなが鬼切を振り下ろしており、更に分析することは叶わず、飛び退いて距離を取る。
“鬼ヲ切ル”という強力な呪い、
その斬撃は宿儺自身に刻まれた術式にまで及んでいたのだ。