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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第23章 本領



宿儺目がけて踏み込んだなずなの目が不自然に途切れた雨粒を捉える。

咄嗟に身を屈めると間髪入れずに後れ髪がわずかに切られた。

この生得領域に来る前、虎杖に襲いかかっていた宿儺の斬撃だ。
あの時は斬撃そのものは見えなかったが、今は雨のお陰でよく見える。


身体強化もこれまでにない程強力に掛かっており、斬撃を避けつつ宿儺との距離を詰めていく。



一方、宿儺はつまらなさそうに片目をすがめた。

この生得領域に侵入してきたのは少し予想外だったが、攻撃手段はあの刀だけという単純一辺倒。
飽和攻撃への対抗手段もなさそうだ。

一息に刻んでやろうと掌印を組む。
領域を閉じて展開すればなずなはここから逃げられない。



―領域展……―



だが、伏魔御厨子が現れる前にゴトリと宿儺の左腕が落ちた。

いつの間にか足元には橋が現れており、なずなが宿儺のすぐ横に立っている。


まだ全力を出していなかったのか、それとも領域を展開しようとしたことで反射的な何かが働いたのか、いずれにしても……


「つまらん」

「っ!」


右手でなずなを殴り飛ばしつつ、左腕を再生させるため反転術式を廻す。




しかし、


腕の再生など造作もないはずなのに一向に治る兆候がない。


「小娘、貴様……何をした?」

「ケホッ、見ての通りだよ、オマエの腕を切った」


殴り飛ばされたなずなが起き上がり、宿儺を睨みつける。





渡辺家の者達が代々鬼切に篭めてきた呪い―



それは『鬼ヲ切ル』呪い。


対象を鬼に限定することで、鬼に対してのみその切れ味は異様なまでに跳ね上がる。

鬼切自体が使い手を選ぶのはより強い鬼を斬るため。


なずなの家族の命を奪った世代交代の呪いは、あくまでその副次効果に過ぎなかった。


1000年積み重ねられた鬼切の呪いとその鬼切の呪力を引き出し、己を強化する術式……


その本領が開花する。


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