第23章 本領
なずなも最初こそ鬼切の軌道に驚きはしたものの、これ幸いと追尾機能を使い、宿儺に切りかかる。
上段に鋭い切り込み、
躱されても返す刀で追いかける。
一撃、
一撃でいい。
宿儺に一太刀でも浴びせられれば十分。
なぜか不思議とそう確信があった。
宿儺に迫る度に手に馴染んでいく鬼切が教えてくれているような感覚だ。
それに……
私への直接攻撃がほとんどない。
多分さっき恵くんが初撃を止めてくれたからだ。
肉体が抵抗することを見越して宿儺は周囲の破壊に巻き込む形でしか攻撃してこない。
ありがとう、恵くん。
すぐに助けるから、もう少し辛抱して……!
虎杖と真希がドロドロと歪な形の不完全に顕現した玉犬の包囲網を突破し、宿儺の意識がわずかにそちらを向く。
ほんの一瞬にも満たない隙。
わざとだ、となずなは直感した。
呪いの王がこんな決定的な隙を素で見せるはずない。
宿儺がこちらの攻撃を誘っている。
私が恵くんのことを斬れないと思っているのなら好都合、
さっき来栖さんと天使さんが全力で術式を使ったことで宿儺は剥がれかけてる。
私に恵くんを助けられる可能性があるとすれば今しかない……!
素直に誘いに乗り、鬼切を振り下ろす。
そして、その刃は宿儺の肩口を切り裂いた。