第23章 本領
宿儺にとって人間は虫も同然。
「つつけばたちまち崩れてしまう生き物が永く幸福でありたいなどとどうして口にできる」
手足を捥ぐことや全身を潰すことは容易く、なんなら直接手を下すことなく野垂れ死んでいることさえ珍しくない。
そんな生き物が何故そうも必死に生きたがるのか、宿儺には理解できないし、しようとも思わなかった。
「貴様らは身の丈にあった不幸を生涯噛み潰していればいいのだ」
実につまらないと言わんばかりの冷たい眼差しに虎杖はギリと歯噛みした。
ああ……
コイツらはどこまでいっても
“呪い”なんだ。
「オマエも噛み潰してみろ。俺という不幸をよ」
「来てみろ」
虎杖が一歩踏み出すとその足先が切れる。
だが前に進み続ける。
更に耳の端が切れる。
虎杖の足が止まることはない。
全身に無数の斬撃が走る。
それでもなお血を流しながら虎杖は突き進んでくる。
その頑丈さに宿儺は眉をひそめた。
加減した訳でもないのに捌の傷が浅い。
表面が薄く切れているだけだ。
なんだ?
何故ここまで硬い……?
妙だと考え、更に呪力を練ろうとした時に違和感の正体に気づいた。
……いや違う。
それを裏付けるようにギチと手が強張る。
だがその先を考察する前に、間髪入れずに迫ってきた虎杖に殴り飛ばされた。
ビルの壁を陥没させる程の威力で吹き飛ばされ、瓦礫の中から身を起こす。
小僧が硬くなったのではなく、俺の呪力出力が落ちているのか。
「……伏黒恵め」
宿儺は片手を軽く握って開き、感覚を確かめる。
ムラはあるが、呪力出力は酷いと一割以下までいくな。
肉体の動きの方はそこまでてはないが……
「やはり何事にも仕上げは必要だな」
まぁ、ここで小僧と小娘を殺す分には特に不自由はしない。