第23章 本領
来栖は意を決して呪力を練る。
光よ
全てを浄化したまう光よ
罪 咎 憂いを消し去り
彼の者を導きたまえ
天上から降り注ぐ光がより強く広がっていく。
「返せ」
来栖の手元に呪力で編まれたラッパが現れ、口をつけて深く息を吸う。
先程はためらってしまったが、もうそんなことはしない。
出力最大
―邪去侮(ヤコブ)の梯子―
広がった周囲の光が宿儺に収束し、頭蓋骨のような顔を持つ無数の天使が舞い降りてくる。
力の限りラッパを吹くとみるみる宿儺が灼かれていった。
「返せ!返せ!!」
全力で術式を展開した来栖の目から涙が溢れてくる。
「恵は!!私のモノだ!!」
そして、
「華、思い出したよ」
呼ばれた名前に僅かに来栖が止まった。
「ありがとう」
こちらに手を差し伸べる伏黒の体から宿儺の紋様が徐々に薄れていっている。
「もう大丈夫」
穏やかに笑いかけられ、来栖は息を詰まらせた。
良かった、間に合った!
「恵……っ」
すぐさま術式を止めて喜びを噛み締める。
戻ってきた!
それに私のことを思い出してくれた!
「駄目だ!華!まだだ!」
そんな天使の警告は耳に入らない。
真っ直ぐ下に降りて彼に駆け寄ろうとすると、強く腕を掴まれて引き留められる。
振り向くとなずなが眉を寄せて大きく首を横に振った。
「来栖さん、あれは宿儺だよ、恵くんじゃない!」