第23章 本領
「……め、恵くん……?」
なずなは目の前の光景を受け入れることができなかった。
頭から氷水を浴びせかけられたかのように血の気が引いていく。
何が、起こったの……?
なんで、その紋様が恵くんにあるの?
なんで、目の色が変わってるの?
声だってそんなのじゃない……
なんで、
なんで、
どうして……!
握った鬼切だけは変わらず脈打ち、危険を知らせているが、時が止まったかのようになずなは動けない。
虎杖もまた愕然とするしかなかった。
「……伏黒?」
嘘だ。
嘘だ、嘘だ。
小指を失いズキンズキンと脈打つように痛む左手とすぐ目の前の伏黒から立ち昇る禍々しい呪力。
それでも信じられなかった。
次の瞬間、宿儺の膝が虎杖の鳩尾にめり込んだ。
無防備な状態で強烈な蹴りを受け、虎杖は血を吐きながら吹っ飛ばされる。
「虎杖くん!?」
頬の横を掠めた蹴りと踏まれていた手にかかっていた重みが消え去ったことで、なずなはハッと我に返った。
虎杖がビルを何棟も突き破って飛ばされるのを見ることしかできずにいると、髪ごと頭を掴まれて無理やり反対側を向かされる。