第23章 本領
幸い宿儺にはこちらを傷つけられないという縛りがあるようだし、虎杖も肉体を完全に乗っ取られた訳ではないはず。
未だ「何故」という疑問は拭い去ることができていないが、やるべきことは明白だ。
「領域展―」
「布瑠部由良由良」
なずなは鬼切の刀身に指を当て、伏黒は両手を握り込む。
しかし、
「遅い」
「あっ……!?」
なずなの視界がぐるんと回り、気づくと下に引き倒されていた。
鬼切に当てていた手も踏みつけられている。
これでは印を切れない。
まずい、
早く領域を展開しないと……!
だが踏まれた左手を引き抜こうとしてもびくともしない。
早く、
早く……!!
脈動し続ける鬼切に言い様のない焦燥感が募る。
顔を上げると、伏黒も拳に手を割り込まれて掌印を阻まれていた。
対応する間もなく伏黒は強い力で顎を掴まれ、そのまま上を向かされる。
「やめてっ!!」
なずなの悲鳴などお構いなしに宿儺は先程引きちぎった自分の小指を無理やり伏黒の口に押し込んだ。
ドグンッ
次の瞬間、虎杖は肉体の主導権を取り戻す。
目の前には俯いた伏黒。
足元には目を見開き、真っ青な顔色で固まっているなずな。
「覚えているか?面白いものが見れると」
伏黒を掴んでいた虎杖の手が払われ、ゆっくりと伏黒が顔を上げる。
「言っただろう、小僧」
顔には紋様、両目の下に更に開いたもう一対の目……
黒髪を掻き上げたのは、まごうことなき呪いの王
両面宿儺だった。