第23章 本領
声の主は来栖を静かに横たえた後、ゆっくりと立ち上がる。
「小僧との縛りでな、この1分間は誰を殺しても傷つけてもならんことになっている」
その顔には宿儺の紋様が浮かび上がっていた。
「宿儺……!?なんで!?」
「虎杖くんに何をしたの!?」
縛りのことを全く知らない伏黒となずなは狼狽した。
何故宿儺が出てきた?
今回は無理やり指を飲まされた訳でもないのに、どうして宿儺に肉体を明け渡した?
それに“縛り”なんていつの間に?
宿儺は動けない2人を眺めて目を細めると、口角を上げた。
「もっともここからは賭けだがな」
宿儺の左小指に禍々しい呪力が集まり、赤黒く変色していく。
その様は特級呪物・両面宿儺の指そのもの。
そしてためらいなくその小指を引きちぎった。
「クッ……クックック!」
宿儺の高笑いが響く。
「つくづく愚かな小僧だ!!“誰も傷つけない”という縛りに自分自身を入れていない!」
伏黒もなずなも動けない中、虎杖が乙骨に頼んでいたことを思い出す。
―もし次、俺が宿儺と代わったら、迷わず殺してくれ―
今、この場に乙骨はいない。
どうしたって駆けつけられない距離だ。
自分達でやるしかない……!