第23章 本領
「伏黒!どうなってんだ!?」
虎杖の問いかけは耳に届いたが、あまりの衝撃に伏黒は答えられず、代わりになずなが声を震わせて警告した。
「この人、津美紀さんに受肉した過去の術師だよ!今まで津美紀さんのフリをしてたってこと……!」
「!!」
なずなは鬼切に手をかけているが、抜くことはできなかった。
あの人を傷つけてしまったら、津美紀さんも傷つく……!
恵くんはずっと津美紀さんを助けようとしていたんだから、私がそんなことをする訳にはいかない。
まずは拘束して……でもそれからどうする?
交渉して何かと引き換えに津美紀さんの身体を返してもらう?
そもそも受肉後に津美紀さんの身体から出ていくなんてこと、あの術師にできるの?
分からないことばかりで次にどう動くべきなのか判断できない。
「私は万(よろず)、昔の連中にならまだ通じるかもね」
自らを明かし、くるくると髪を弄ぶ姿。
受肉の事実が伏黒の頭に直接叩きつけられたようだった。
津美紀が呪いに倒れたあの時から、もう既に……?
続けて脳裏によぎったのは受肉した人間のことを聞いた時の天使の言葉。
―彼らの多くは受肉の過程で器の自我を殺し沈めている―
―無理とは断言できないが、九割九分死ぬ。受肉とは呪物と肉体の融合でもあるからね。都合よく片方だけ引き剥がすのは難しい―
だとすれば津美紀の自我は?
天使の言葉が真実ならば、天使の術式を使ったとしても助かる確率は1%?
呪いにかかったあの時点で既に手遅れだったのか?