第23章 本領
「私の出番がなくて良かったです」
上空から降ってきた声に驚いた津美紀が顔を上げると来栖が降りてくるのが目に入る。
「こっちは来栖。津美紀の姉ちゃんが空から落っこちてきた時のために上を張っててくれたんだ」
虎杖に紹介された来栖はよしよしと小さく頷いた。
ナイス、虎杖。
私の株を上げなさい。
当初津美紀との合流はもっと時間がかかる想定だったが、思いの外スムーズにいったため、早速伏黒は次の行動に移った。
まだ真希と高羽が合流していないが、下手にモタモタしてせっかく落ち着いて離脱できる機会を失いたくないし、あの2人なら大丈夫だろうという判断だ。
「さっさと済ませよう。コガネ、津美紀に100点譲渡しろ」
「はいよっ」
「伏黒恵から100点が譲渡されました」
津美紀のコガネが現れてアナウンスして津美紀の得点が0から100に加算される。
伏黒のそっけない態度にニヤニヤする虎杖と来栖がコソコソと話をする。
「家族の前だとより淡白になるの、反抗期みたいね」
「カワイイです」
恵くんの新しい一面……!
口には出さないものの、なずなも目を輝かせている。
無論、虎杖と来栖の会話は伏黒の耳にも入っており、2人の態度に青筋を浮かべつつも話を先に進めた。
「今、津美紀に渡した100点、それを使って死滅回游から抜けられる。身代わりの話は真希さんから聞いてるな」
「ええ」
頷いた津美紀を見て伏黒の胸中に安堵が広がった。
これで津美紀は死滅回游から離脱できる。
呪術界のことを知ってしまったから全く元通りという訳にはいかないが、無為転変の影響もなく、普通の生活に戻れる。
やっとだ。
津美紀が呪いに倒れてから1年7ヶ月、その間に中学を卒業して呪術高専に進学し、必死で原因を探っても原因不明としか分からず暗礁に乗り上げていた。
ようやく目覚めたと思ったら今度は殺し合いの儀式に巻き込まれていると判明して……
虎杖やなずな、先輩達の協力でやっと助けられる。