第23章 本領
同じ頃、東京第1結界内部では見通しの良いビルの屋上で虎杖達が待機、少し離れた場所に高羽、更に上空には来栖がおり、転送されてきた津美紀をいち早く見つける態勢を整えていた。
真希が結界を出て3時間弱、予定通りであればもうすぐ津美紀が参加を宣誓する頃だ。
周囲の気配に気を配りながら待っていると、突然虎杖達の目の前に髪をポニーテールに結った同年代の女性が現れる。
「おっ?とっと?」
「え、この人!?ドンピシャ転送?」
虎杖が目を丸くする隣でなずながコガネに尋ねると確かに『伏黒津美紀』と答えが返ってきた。
たたらを踏んで止まった津美紀はすぐ伏黒に目を向ける。
「あ、恵、よかった。すごいびっくり……」
「……おう」
「運いいなぁ、津美紀の姉ちゃん」
「皆が皆、空から落ちてくる訳じゃないんだね」
無愛想な返事をする伏黒の傍で虎杖となずなが感心していると、2人の制服を目に留めた津美紀がこちらに向き直った。
「はじめまして。恵がお世話になってます」
「虎杖です。こちらこそ」
「渡辺なずなです。恵くんにはお世話になりっぱなしで……!」
丁寧にお辞儀する津美紀に倣って挨拶する。
この人が恵くんのお姉さん……
すごく穏やかで優しそうな人……
男兄弟に挟まれて育ったなずなにとって、津美紀から向けられた柔らかい声や表情は経験したことのないものだった。