第22章 呪い合い、殺し合い、
「そうだとすると、虎杖くんはいつ宿儺が“堕天”だって気づいたんだろう?天使さんは“堕天”の特徴なんて言ってなかったよ」
天使が口にしたのは“堕天”と呼ばれる泳者をなんとしても屠りたいということ、そして“堕天”は受肉した泳者であることだけだ。
伏黒もそこは疑問点であり、顎に手を当てて思案する。
「……宿儺が自ら名乗り出たんじゃねぇか?天使から“堕天”の話が出た直後、虎杖の様子が少しおかしかった」
「!」
伏黒の言っているおかしな様子はなずなもすぐに思い当たった。
五条解放のための条件を聞いた直後、何もない所に目を向けて聞き返すような言葉を発していた。謎のジェスチャーが始まったのはその後だ。
「で、でも、それじゃあ五条先生の解放は虎杖くんの命と引き換えってこと?そんなの……!」
「ああ、俺は反対だ。そもそも天使が殺したいのは受肉して器の自我を殺している術師だが虎杖の自我は殺されてない。肉体の主導権も常に虎杖が持ってる。天使に対してはその辺りが交渉材料になると思う」
「よ、よかった、それなら大丈夫そうだね」
渋谷のような一時的な肉体の乗っ取りの可能性は残りの指の数からゼロに近いことは本人の口からも聞いていたので、天使に諦めてもらえばなんとかなりそうだ。
なずながホッと安堵したのも束の間、伏黒が眉を寄せて首を横に振った。
「いや、問題は虎杖自身が命を差し出すことをためらわないってことだ。多分アイツは天使の条件を呑む」
「え……」