第22章 呪い合い、殺し合い、
来栖は空から、伏黒達は玉犬の鼻を頼りに地上から呪霊に襲われている軍人を探し、救助に動いていた。
「らしくないんじゃないか?」
「……そうかな」
前を走る虎杖に伏黒が疑問をぶつけるが、虎杖は振り向かない。
「……言ってた内容は別に。“オマエら”ってのは天使と宿儺のことだろ?いつものオマエならもう少し来栖に気を遣ったんじゃないか?」
なずなも伏黒と同じ思いだった。
来栖が天使と共生しているのは事実だが、自分達を助けてくれたのも事実。
そしてなずなは彼女の口から伏黒への想いも聞いた。
たとえ来栖のことを指していなくとも、虎杖のあの言い方では真っ向から「信用していない」と言われたと受け止められても仕方ないと感じる。
少し間を置くと、虎杖が気まずそうに口を開いた。
「渡辺と合流して伏黒が起きて、来栖が……釘崎の代わりみたいになるのが怖くなった」
「……バカ言うな」
「そ、そうだよ、来栖さんもだけど、野薔薇ちゃんもきっと怒るよ」
「……後で謝る」
「そうしろ」
3人が立ち止まった先にひと仕事終えた来栖が降りてきた。
片目を瞑ってどこか得意げな顔で虎杖に目を向ける。
「何か言うことがあるんじゃないですか?」
来栖にさぁさぁと促されて虎杖は謝罪し、2人は協力して軍人を狙う呪霊を祓っていった。
その後、助けた軍人達に話を聞いたところ、呪術師狩りの任務を遂行中で術師が抵抗する可能性は織り込み済みだったが、呪霊に襲われる危険があることは一切知らされていなかったこと、これでは任務遂行困難であり撤退も視野に入るが、結界の出方を指示されていなかったということだった。
更に呪霊に対しては通常の銃火器が効かず、呪力でしか祓えないことを伝えると両手で顔を覆い、項垂れてしまった。