第22章 呪い合い、殺し合い、
釣り人の呪霊は新しい魚を釣ろうと餌となる人間を掴む。
今まさに次の釣り餌になろうとしている軍人は目の前の光景にただただ竦んでいた。
俺は軍人だ。
覚悟はできてる。
いつかテロリストの凶弾に倒れるかもしれない。
いつか何の思い入れのない砂漠で地雷を踏み抜くかもしれない。
いつか、
いつか、
いつか……
でも、これは違う。
呪霊の巨大な手に鷲掴みにされもがくが、抵抗も虚しく迫ってくる釣り針。
嫌だ、
こんなのは嫌だ……!
極太の鋭い針が突き刺さるまさにその時、
突然空から眩い光が差し、呪霊が蒸発するように消える。
そして、光と共に舞い降りてきたのは天使だった。
非現実的な光景も今なら信じられる。
「ジーザス……ついにお迎えがきたようだ……」
来栖は呪霊に掴まれていた軍人に手を差し伸べる。
人を助けることは無駄でも無意味でもない。
私にとっては大きな意味があること。
それを確信したのは、助け出されたあの冬の日。
全ては運命。
いつかあなたに巡り合うことを信じて、少しずつ少しずつ、これからもあなたの隣にふさわしい人間になるために……
私は人を助ける。