第22章 呪い合い、殺し合い、
「助けよう」
迷いない虎杖の真剣な目。
「軍人達をか?でも俺達を拉致して体をイジくろうって連中だぜぇ?エッチなことされるかも」
「だが放っておいたら“慣らし”が済んでこの国の人達が天元様と団子になるかもしれない」
「俺、よく分かってないんだよなぁ」
伏黒の危惧がイマイチ理解できていない高羽。
首を傾げる彼になずなが説明を試みる。
「えっと、結界内で多数の死者が出たら外にいる人達まで巻き込んだ呪いが発動するんです。もしそうなったら人が人でなくなってしまって、だからその……人を笑顔にするとかも言ってられなくなります」
「そりゃ大変だ!俺の存在意義の危機!!」
なんともズレた視点で頭を抱えた高羽だったが、とりあえず危機感は共有できた……と思う。
現在時刻は午前2時、呪霊は夜に活発化するため、ここから明け方までにどれだけ被害を防ぐかが喫緊だ。
軍人の部隊がどこに配置されたのか、伏黒が尋問しようとしたその矢先、
「ダメだ」
天使が待ったをかけた。
「東京第1、第2共に術師の泳者が50人は戦い散った。既にここ東京第1結界は呪力で満たされている」
それぞれ日車、鹿紫雲によって早々に死滅回游の目的の第一段階は達成されてしまった。
ここでいくら被害を抑えても手遅れ。
だが、たとえそうだとしても虎杖が踏みとどまる理由にはならなかった。
「だから何だよ」
「意味がないと言っているんだ。軍人達を助けようと助けまいと何も結果は変わらない」
「だから、何だよ」
繰り返し天使に詰め寄る虎杖の声は硬い。
「私と華は共生関係だ。彼女のリスクは私のリスク。意味のない争いに彼女を巻き込むのはやめてくれ」
「もともと別に仲間でもなんでもねぇ。こっちは勝手にやらせてもらう。指図すんな、俺はオマエらを信用してない」
いつになく厳しい言葉を口にする虎杖に伏黒は疑問符を浮かべ、なずなが宥めようと一歩前に出る。
「い、虎杖くん、そういう言い方は……」
すると今度は眉を寄せた来栖が口を開いた。
「さっきから天使と喋ってますか?それとも私?不愉快です」