第22章 呪い合い、殺し合い、
日本語が通じるのなら話が早い。
さすがに命まで奪うつもりは全くないが、尋問のための材料として使わせてもらう。
「命が惜しければ正直に答えろ。ここに来た目的は何だ?俺達を狙う理由は?」
「詳しくは知らねぇよ。俺は末端も末端だからな」
続いて男の口から出てきた言葉は伏黒達の予想だにしないものだった。
「オマエらが使う呪力とやらを代替エネルギーとして研究することになったらしい。それで個人がエネルギーを自給自足できないかということでな」
「!」
その言葉に死滅回游に参加する前に九十九から聞いたことを思い出す。
羂索が追求する呪力の最適化、日本での人類と天元の同化。
その穴として語っていた呪力というエネルギーを日本がほぼ独占した場合に起こることについて。
アメリカを始め、各国が黙っていないと言っていた。
それが今、死滅回游の最中に始まったのか。
同時にあまりに手際が良すぎることに伏黒は訝しんだ。
いくらなんでも早すぎないか?
渋谷での出来事が10月31日の夜。
すぐに海外にその異常事態が知れ渡ったとしても2週間程度で羂索がここまで軍隊を、しかも米軍を動かせる訳がない。
事前に示し合わせていたとしか思えないレベルのタイミングだ。
その背後で高羽が来栖に耳打ちする。
「日本人だぞ」
「現地ガイドですよ。要は裏切り者です」
すると高羽がいきなり男の胸ぐらに掴みかかった。
「この……っ!売国奴!!」
「売国奴って言ってみたかったんですね。黙っててください」
いちいち話の腰を折る高羽を来栖が勢いよく引き剥がす。