第7章 エピローグ
「なに? 気に入らなかった?」
「気に入らなくはないけど、これ、私、ここに住む事になってるよね?」
「そうだよ」
「いつそんな話、決まったの?」
「えーっと、4日前くらいかな、あ、そうだ! 未亜呼ぼーって」
「なにそれ? そんでうちの実家から荷物を?」
「琴さんには、よろしくお願いしますって言われたよ」
「ちょ、ちょっ、ちょーっと待って。冷静にいこ。私、どこに存在してる? 本人いないまま話、進んでない?」
「サプライズじゃん! 教えちゃったら面白くないでしょ?」
会話のズレと悟のマイペースがすごすぎて未亜は、こういう人だとわかってはいたものの、はぁーっとため息をついた。
「わかった、わかったよ。サプライズありがと。でもさ、こういうのはちゃんと相談して。それにまだ、なんていうか、私たち、正式に付き合ってるわけじゃ――」
「何言ってんの? 僕たち結婚するよね?」
「は、、、い? またそんな話、急にいったいどこから」
「だって僕、4年半前にプロポーズしてるし。薔薇の花束持って約束果たしに行ったでしょ?」
「いや、そうだけど、あの時……返事してないじゃん」
「あれ? 領域展開してる時、ずっと心の中にいたとかなんとか言ってなかったあ? 12年間ずっと好きだったとかなんとか――」
「あーーーー、もうーーわーかーりました!」
未亜は悟の家に住むことになった。
「ハイ、僕の勝ちー」と、嬉しそうにニコニコしているのを見ると、なんか腹立つと思いながらもま、いっかとなり惚れた弱みを実感してしまう未亜だった。
◇
サラリーマンが勤務を終えて行き交いするメイン通りから一本離れた細道に、軒先に赤ちょうちんが提げられた食べ処”小鳥箱”がある。
薄い引き戸の玄関で、お世辞にも色気があるとは言えないが古木の温かみが感じられる、そんな"小鳥箱"の奥の小上がりに家入硝子と未亜はいた。