第6章 12年目の真実
高専の時、呪詛師に拉致された事件も、その4年後の偽の傀儡婚約者も、今回の殺害計画も、全部この男の仕業だった。
その度に傷つき、自分を責めて、後悔して、血を吐くような思いをして……私だけじゃない、悟だって同じように苦しんだ。
母は私の命と引き換えに人質にされ、全く関係ない幼馴染の命まで巻き添えにされた。
掌には、知らず知らずに呪力が満ちて、気付くと指の間を重ね合わせ、その掌印を楠本の方に向けていた。
「……許さない。絶対に許さない」
「待て、こいつは呪力が使えない非術師だ。このまま未亜がここで術式を使えば、ただの人殺しってことになる」
『くっくっくっくっ。じゃ、ここいらで私は失礼』
楠本は屏風の後ろにささっと移動し、回転型の襖を開けると、表に通じると思われる裏廊下に出ようとした。
「待て」未亜が叫ぶとほぼ同時に、ダダダダダと10名ほどの男たちが個室に駆け込み、裏廊下からも男が数名現れた。全員、拳銃を構えている。
「楠本謙三、銃刀法違反で現行犯逮捕」
リーダーらしき人物が声をかけると一斉に警察官が楠本に飛びかかり彼は逮捕され、気絶していた刈谷と共に連行された。
「グッドタイミングだったねー。連絡のタイミングばっちり」
「悟が呼んだの?」
「そっ、逃げられることは想定できたからね。あいつ二度と社場に出て来れないよう僕が証拠を警察にどっさり送ったから、ま、実質死んだようなもんだよ」
合わせて、人質にとられていた母親の琴が、七海と一緒に現場に現れた。
数ヶ月ぶりに見た母親の顔はやつれており、大丈夫? と何度も確かめると、琴は未亜が無事でよかったと弱々しい笑顔を見せ、未亜は抱きついて涙を流した。