第6章 12年目の真実
――この人、狂ってる……。
未亜は背筋が凍りつく感覚を覚えた。
「大丈夫か?」
「うん」
すぐに五条は自分の無下限術式の範囲内に入るように未亜に体を寄せた。
「楠本さん教えて。どうして? どうしてそこまで私を、一条家を目の敵にするの? 500年前の因縁のせい?」
『ふっ、ふっっ、フハハハ……どこまでもおめでたいお嬢さんだ。そんなもんは利用しただけにすぎん。因縁があることで五条と一条の不仲を生み出す。それだけのことだ。言い伝えなどどうでもいい!』
「どういう、こと……? 不仲を生み出すって、それと楠本さんと一体何の関係が?」
『関係ねぇ。困るんですよ、あなたたちが一緒になってもらうのは。わたし、もう何十年も麻薬、反社会的勢力、詐欺グループ、まぁ、あちこち黒いところに手を染めてましてね、五条悟……あんたの代になってからやたら詮索の手が伸びてきて、ちょろちょろちょろちょろ鬱陶しいのなんのって。
そこに来て一条家はもともと上層部と深いつながりがあって、人のコネクションがまぁ豊富ったらありゃしない。いつ闇商売の核心にたどりついてもおかしくないんですよ。
そんな両家、およびあなた達2人が協力して一緒に一網打尽……なーんてことになったらこれまで積み上げてきたわたしの人生"どっかーーん"なんですよ。どうせならK2の罪をぜーんぶ被って大人しくしてもらおうと思いましてね。』
「……。つまりは、自分の私利私欲のために私と悟を引き離して、永遠に一条と五条が近づかないよう消そうとした、と?」
『ま、そんなとこです。あー、彼も気の毒だったなぁー。名前なんだっけ? あの布屋の息子』
(布屋……え? ま、さか……? 匡兄ちゃん?)
『あんたに惚れてるようだったから、五条悟がいる限り結ばれることはないって言ったら、急に目の色変えて、五条悟から奪う方法を教えてくれって。呪詛師達にいい具合に洗脳されて、しっかり利用させてもらいましたよ』
未亜は怒りが体中から噴き上げて、全身の毛が逆立つのを感じた。
初めて目の前の人間を殺したいと思った。
こんなちっぽけな男のこんなくだらない理由のために、私の10年間は犠牲になった。