第6章 12年目の真実
五条は襖を開けて、個室に乱入すると刈谷の首根っこを掴んで吊し上げた。
刈谷は予想だにしていなかっただろうその展開に目をひん剥いて驚き、五条に持ち上げられて地につかない足をバタバタともがいている。
酒で酔っているせいか顔全体が赤い。気管が圧迫されているのか苦しそうに声を出した。
「ご、、じょう、さと、、る……貴様、一条の娘は、どう、、し、た」
「お望みどおり、ちゃんと連れてきたよー、ほら」
個室のすぐ外に身を置いていた未亜は、五条の合図で部屋の中に入った。刈谷は未亜を見ると、どういう事だ? と慌てふためいて脂汗を流し出した。
ウッ!
五条は刈谷の額に2本の指で圧をかけると、刈谷は気絶して、そのまま壁にもたれずるずると座り込んだ。
座り込んだ刈谷から五条に視点を移すと、五条の陰からもうひとりの人物が僅かに見える。
黒幕はもうひとりいた。やはり、K2は刈谷のことを指すのではなく、刈谷ともうひとりの人物……
先程の会話の雰囲気からするとおそらくその人物が本当の黒幕……。
五条がその身を黒幕らしい人物に向けるとぼんやりとした輪郭からはっきりとその姿が映し出された。
それは見覚えのある目だった。ドス黒いタールのような眼光。
!!!!!!
「あんた、まさか生きてたなんてな……」
『お久しぶりでございます。悟ぼっちゃま』
「五条家を出る時、二度と悪事を働かないようにと喉をつぶしたはずなんだけどな!! やっぱりあの傀儡師とつるんでた件で一緒に殺しておくべきだったか! あ!? 先代の情けを裏切りやがって」
『いやいや、待ってくださいよ。あの件はわたしは……』
「まだいう? こっちは金の流れも掴んでんだからな」
『……ん、んんっ。そのおかげでわたしも一度は完全に声帯をやられて声が出なくなりましたよ。今もこんなしゃがれ声でございます。ですけどね、人間っていうのは不思議なもんでね……。目的を果たすまでは何度も蘇るんですよ――不死鳥のようにね!』
ダァーン !
言葉を放つやいなや、一発の銃弾が五条と未亜の間の隙間を貫通し、壁に当たった。
五条の無下限術式の範囲からちょうど抜けた空間だった。未亜の左耳のすぐ横をすり抜けて髪がかすった。