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【呪術廻戦】-12年目の真実-

第5章 恋情と嘘


 このまま無言で技を出そうと思った。
 さっさと無量空処を浴びようと思った。

 でも、これでほんとに悟の声を聞くのが最後になるのかと思うと、急に胸の奥が揺らぎ出した。

 泣くわけにはいかない。
 本当の事を話すわけにはいかない。
 そんな中、私は最後に何を伝える事が出来るだろう?

 体中の細胞が咽び泣いてるような気がした。
 何か彼に語りかけたくなった。

「僕をそんなに殺したいわけ? 悪いけど、未亜には出来ないよ」

「……できな、い、出来ないって言った? なに見下してんの? 私に情があるとでも思ってる?
ほんとに、もう、邪魔なの。ずっとずっとずっとずっと何年も。なんで? どうして? 何度追い出しても、ずっと心に居続けるの!
……とにかく消えて。悟の調査してた呪霊ラボの一件、少年刑務所で宿儺の器を襲った件、上層部の闇献金、すべて私が一条家の利益のためにやったことだから。長年の癒着がバレて、悟たちに牙をむかれるまえに、こっちから討つ。それだけ」

 言い尽くして未亜はひとつ呼吸を入れた。
 今度はちゃんと言えたじゃん。思い残す事ないよね、よくやったよね……。

 状況が許してくれなくてこんな言い方しか出来なかったけど、未亜にとってはこれが精一杯のお別れの言葉だった。

 術師を辞めた卒業の日もプロポーズしに来てくれた夜も最後に何ひとつ思いを伝える事が出来なかった。

 ほんとうは愛してる――言いたくてもそこに悟の姿はなかった。

 どちらも辛い別れだったけど、決してそればかりじゃない。悟からは沢山の思い出をもらった。

 ありがとう、せめてそれだけは言いたかった。後悔して人生の約半分、ずっと心を占めてた人。

 ――結局、最期までありがとうも好きだという思いも言えなかったな……。どうか元気で。呪いの被害から人を守って。たくさん救って。

 なんだかんだみんな悟のこと、頼りにしてる。恵くんや、虎杖くん、釘崎さん、ちゃんと一人前の術師に育ててあげてね。絶対死なせないでよ! もちろん悟も! あ、これはいらないか……悟だもんね。

 そうだ、硝子……時々飲みすぎてないか気にかけてくれるかな? 悟も甘いものばっか取りすぎないようにちゃんとした食事して。

 そして――もし、いい人が現れたら……

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