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【呪術廻戦】-12年目の真実-

第5章 恋情と嘘


 空気中にバラバラに存在している物質が一斉にさっと紡がれた糸のようになるこの気配は高専時代からずっと変わらない。

 戦いを始める前の集中力がそうさせる。

「まさか君が黒幕だったとはねー」

「華部大天経……寂滅道場塵遮那品
 "骸空" 殺せ」

 五条の会話を無視して、特級仮想怨霊、骸空を解放した。すばやく殺せと指令を与える。宿儺の指10本分くらいには成長してるはずである。

 ぐああおーと声をあげて骸空は五条に飛びかかった。が、当たらない。まぁ想定内だ。骸空は20発ほど打撃をくらって空を舞う。

「ちょっと待ってよ、穏便に行こうじゃないの」

 なにひとつ変わらぬ様子で五条は歩きながら話しかけてきたが、未亜は話がしたくなかった。

 顔も見たくなかった。できればこの薄暗い闇の中で、何も感じないまま無機質に動き、計画通りに事を実行したい。

 じゃなきゃ攻撃の手をきっと緩めてしまう。

「骸空、ほらおいで」
 特級仮想怨霊を呼び、なでてやると子供のように嬉しそうにする。まやかしのような術式だ。

「もう一度殺れ」
 命をくだすと五条に飛びかかった。未亜も同時に悟の隙に入り込む。

 五条悟の対策は練り上がっている。彼には攻撃は当たらない。ただむやみに攻撃をしかけても、呪力を浪費するだけだ。

 こちらからは一切触れられないのはわかっている。がしかし、彼から私には触れることは出来る。

だとすれば……。

 五条の脇に入り込もうとした瞬間、おい、と腕をつかまれ引き寄せられた。

 いま!

 拡張術式――骸空をすばやく内部にとりこみ腕を伝って怨霊の呪力を五条に走らせた。

 ジジジジジジジジジ
 身体から電流のような熱が五条に伝わり焦げるような匂いがする。

 ほんの僅かだが、五条の内臓を負傷させたかもしれない。腹部から流血がとばしっていた。

 もう少しダメージを与えたいがこのまま接近戦ではきっと彼のスピードには勝てない。

 未亜は五条から距離をとった。

 距離を取ったはいいのだが五条の位置がわからない。前後左右を確認したが暗さもあって見えにくい。

 一瞬彼を見失ってしまった。

 どこ?
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